3.11震災で実証されたSRF工法の信頼性と有効性
バランスと柔軟性で損傷と倒壊を免れる新しい構造へ

構造品質保証研究所株式会社
代表取締役 五十嵐 俊一

3月11日午後2時46分、M9.0の東北地方太平洋沖地震が発生し、東北から関東に掛けて震度5〜7の震動を生じた。その後内陸型の地震では、新潟、長野、静岡の各県で震度6クラスの揺れを受けている。

SRF工法(Super Reinforcement with Flexibility)は、包帯補強とも呼ばれる。ポリエステル繊維をベルト状あるいはシート状に織製した構造用の「包帯(高延性材)」で柱を巻き立てたり,壁に絆創膏のように直接貼り付ける補強工法である。

震災地域には、SRF工法を用いた構造物の補強工事実績が、事務所ビル143件、マンション77件、学校75件、庁舎等34件を始めとして460件以上ある。また、東京・新大阪間の東海道新幹線の各駅付近の高架橋脚1200本以上がSRF補強されている。震災後、施設の関係者にアンケートを送付したが、問題があるとの報告は無かった。むしろ、「揺れが少なかった。」、「今回は、壁にほとんどひび割れも入らなかった。」、「最小被害で営業継続できて良かった。」等の好反響を多数頂いた。外壁や外柱にSRF補強した場合には、モルタル直塗り等で仕上げているが、地震で強い力を受けた柱には、若干のひび割れが見られるものの、周囲のコンクリート壁・柱と同様か、むしろ軽微であり、剥落するなどの問題を生じた例はない。また、壁付き柱に対しては、アングルとボルトを用いたり、壁に小さな孔を空けて、ベルトを通すなどの詳細を用いているが、問題なく機能した。

仙台駅前の仙台東洋ビルは、SRF工法による柱補強と壁補強だけで、Is値が規準値をクリアする補強設計を行い、昨年秋に補強工事が完了した。補強前の2008年の地震では、壁、梁、柱に大きなひび割れが多数発生したが、3.11の震災では、ほとんどひび割れを生ぜず地震直後から使用継続した。隣接するさくら野百貨店は、SRF工法により柱、壁を多数補強し、これに若干のRC壁増設等の従来法を加えて昨年初夏に補強工事を完了した。3.11の地震では、鉄骨造部分の外装パネルが落下したが、外壁・内部とも最小被害で、仙台の百貨店の中で最も古い建物であるが、最も早く、4月5日からフルオープンしている。本震の時に店内に居合わせた人の話では、従業員が「この建物は補強してあるので安全です。」と言って避難誘導してくれたので全くパニックにならずに整然と避難できたとのことである。4月7日夜の大きな余震では、壁が崩れるなど大被害を受けた建物も多い中、片づけ程度で営業を継続している。仙台市内のマンションは、Is値に拘らず、倒壊防止を目的にピロティ部分の柱をSRF工法で補強した。周囲の多くのマンションで廊下の壁に大きな亀裂を生じ崩落し、ドアが閉まらなくなるなどの問題を生じている中、ピロティはもとより、上層階の被害もほとんどなく、住民の方々から好評をいただいている。

一方、接着ブレースがずれたり、ブレースが曲がったりした事例、さらには、ブレース補強で、Is値が規準値を大幅に上回っていても、柱が大破し使用できなくなった建物もある。従来の「固める」補強設計は、あらたな弱点を生じたり、補強していない部分に被害が集中する危険性をはらむことが、この震災で明らかになった。

SRFは、変形すると壊れるRC,SRCに代わる新しい構造を生む力があること、言い換えれば、ブレースや樹脂で固めて耐える設計から、バランスと柔軟性で損傷と倒壊を免れる新しい設計への転換を可能にする補強法であることを、3.11は示している。結局、コンクリートの壁、柱は、大地震の後、ひび割れを補修する必要を生ずる。これを予め直接補強することで安全性を確保するSRF工法は、安全と使用性を同時に確保する一石二鳥の工法であると言える。

1.「被災した柱及び壁の補修・補強方法」について詳しくは、こちら
2.「包帯補強による倒壊防止」について簡単な説明は、こちら
3.「包帯補強」について詳しい解説は、こちら
4. 公共施設の施工実績表は、こちら
5. 学校の施工実績表は、こちら

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